KT-D1100の修理

当サイトのFMトランスミッタの調整として使っていたKT-1100Dの調子がどうもおかしい‥。88MHz以上の局で受信周波数がずれる or 受信不能‥
なので分解+調整してみることに。




////////////////////////// 第1部 とりあえず修理//////////////////////////


↓が被検体?のKT-1100Dです。FM放送が大いに盛り上がっていた頃の中級レベル?として売られていたモデルらしいです。
AM受信機能はおまけ程度ですが、FMはある意味やりたい放題。DCC回路で歪を発生させて復調した音声の歪を打ち消したり
DLLD回路で検波器の歪を打ち消したり‥。今だったら全部デジタル処理でやってしまう所ですが、これが発売されていた頃は
全部アナログ‥。今だったら絶対ありえん。



内部は↓ 画像左側にトランスが写っていますが、このトランス‥コンセントが刺さっている間ずっと通電されて発熱します。
‥電源ボタンON/OFFに関係なく発熱するので、長時間使わない時はコンセントを抜いておいた方が賢明です。待機電力削減とか、省エネとか
あまり考えられていないようです



原因を探るため、受信回路(の一部)を調べた結果が↓ direct/distance信号がマイナスの電圧になると初段のQ1プリアンプがOFFになり
大体10dB程度利得が減少します。あとL4⇔L7間が1.5cm程度離れているのですが、電磁的に結合することでQの高いトランスを
構成しているようです。こんなに距離が離れていても信号が伝わるとは‥。そういえばインターディジタル型フィルタというのがありますが
その類と同一のようです。




‥で、肝心の故障箇所の特定ですが、とりあえず88MHz以下の受信周波数では何も問題ないのでAF系、IF系ではないと勝手に判断?。
とりあえずRF系をまさぐる?ために某有名なFMチューナー調整サイトを手本にしてKT-1100Dの調整をやってみることに‥。

そうしたら上記回路図のVTの電圧が88MHz以上で27Vで一定状態に‥。VT端子の電圧はバリコンの羽の回転角と同じなので
88MHz以上になると完全にチューニングダイヤル回しきり状態になってチューニング不可の状態になっていました。
‥なのでVT端子の電圧を規定値にするため、局発を調整した所‥TC(トリマーコンデンサ)が壊れてる‥_/ ̄|○ il||li
手持ちに30pFのトリマーコンデンサがあったので交換して、VT端子の電圧が76MHz受信時3.3V 90MHz受信時24Vとなるよう調整しました








////////////////////////// 第2部 魔改造(笑)//////////////////////////


トリマーコンデンサの交換で修理は完了しましたが、基板も丸見え状態だし、以前から気になっていたDCC回路空きパターン‥‥
多分KT-D3300などの上位機種と同じではないかと。 部品を乗っけて魔改造できるのではないかと思い。とりあえず基板を外してみる事に。
あと、ついでに色々な部品(電解とかOP-AMP)も交換して、性能アップを図ってみようかと。



↓は検波基板。PLL方式で検波します。PLLに駆動するVCO用にスチロールコンデンサを使っていたり、いろいろ凝った作りになっています。
PLLのループフィルタに使っているOP-AMPが上位機種のKT-D3300ではNJM5322‥こいつは性能に劣るNJM4560。もちろん交換(笑)




検波基板のハンダ面。今では殆ど使われていない筒状のチップ抵抗が使われています。




DCC基板。この基板で復調した音声の歪を消します。‥というより潰します。2次や3次の高調波を発生させて、引き算することで消すという‥
あと、この基板の回路ですが、ネットで検索すると出てくるKT-D3300の回路のDCC部分と同じ。部品の種類と番号も同じ(笑)。
違うのは4次の高調波を発生させる部品が付いていないだけ(笑)。‥なので、部品を追加して上位機種同等にします。

基板上の半固定VRをよく見ると‥割れてる⊂⌒~⊃。Д。)⊃   なのでこの部品も多回転VRに交換します。




DCC基板ハンダ面。








↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ 改造後 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓



検波基板の改造点はOP-AMPの交換(M5218→LM4562)のみ  ‥というより代替の利かない部品を壊してしまうと大変なので‥。




DCC基板‥OP-AMP交換、部品追加、半固定抵抗交換、etc‥ やりたい放題(笑)。ここまで改造して壊れたら_/ ̄|○ il||liなので
念入りにチェックしました。




ハンダ面‥ チップ抵抗を持っていないので、1/6W抵抗の足を無理やり曲げて実装。かなり危険。




ケースに実装後の様子。メイン基板上の電解Cの交換とOP-AMPの交換(M5211->LM4562)、半固定抵抗の交換も交換しました。
セパレーション調整用の半固定抵抗に交換すると調整がしやすくなるのでお勧めです。




修理と改造する前のレシーバ出力端子音声信号の様子(ステレオ時)。



修理と改造する前のレシーバ出力端子音声信号の様子(モノラル時)。



修理と改造後のレシーバ出力端子音声信号の様子(ステレオ時)。 改造前と比べて1KHz付近で2dBの改善。
特に低音領域のノイズがかなり減っています。 多分ですが、OP-AMPの1/fノイズが部品交換で相当減ったのが原因かと
思います。




修理と改造後のレシーバ出力端子音声信号の様子(モノラル時)。改造前と比べて1KHz付近で2dBの改善。
ステレオ時と同じ程度の改善が見られます。




L+R 1KHz 100%音声で変調 モノラル受信時のスペクトラム。 高調波歪率0.003%‥ CD並?
4次の高調波まで補正できるので、相当追い込むことが出来ます。




Lch のみ100%音声で変調 ステレオ受信時のスペクトラム。高調波歪率0.012%‥





最後に、KT-1100Dを分解して修理と改造を施し、SN比で約2dBのアップが出来ました‥部品代4000円掛けて2dB‥。
何ともコストパフォーマンスの悪い‥。SNの改善が限定的だった理由として、FM局発の位相歪が大きく
OP-AMPの交換程度ではノイズの低減が限定的だったのではないかと思います。FM局発をDDS化すれば多分大きな改善に
なると思います。 ってアキュフェーズのT-1000じゃん‥_/ ̄|○ il||li という事で、SNを追い求めたい場合には
T-1000を買った方が良いかもしれないです。保障できませんが(笑)。

DCC回路の改造により4次の高調波も補正できるようになりました‥が、4次位になると歪レベルも相当小さくなるので
全高調波歪率で見ると改善の量は微々たる状態だったという_/ ̄|○ il||li。 でも多回転VRに交換した事で調整はしやすくなりました。


いまだったらデジタル化出来そうなところがいっぱいあるなぁ‥と。復調からそれ以降はフルデジタルで‥ と思ったら
すでに実践されている方がいるとは⊂⌒~⊃。Д。)⊃ FPGAでFMチューナー‥すげー。googleで"FPGAでFMチューナ"と検索すると
すぐ見つかります。
洗練されていて完成度が高いのですが、惜しいのはFMフロントエンドが弱そうなのと、マルチパス除去用のエコーキャンセラを
積んでいない点でしょうか。これが良くなれば、多分アキュフェーズのT-1100と同じになると思います。‥さて、1個注文するか(笑)


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